
ler(リンカーン・エレクトリック)の日米両オーガナイザーによって企画され、両地震の被害と原因、更には地震以後の溶接に関連する動きに関して総合的な議論をすることとなり、日米5名の基調講演と統合的なとりまとめの報告がなされ、会場からも活発な討論がなされた。
基調講演として、ノースリッジ地震関連では、T. A. Sabol(Englekirk & Sabol Consulting Eng.)が、ノースリッジ地震における建築鉄骨の被害の状況と特徴を鉄骨構造の設計的観点から概況を述べ、特に溶接設計的観点から破壊の原因と地震後の対策などについて述べ、D.Miller(Licoln Electric)は、ノースリッジ地震の被害の全体的特徴と、鉄骨のうち特に柱・梁接合部の破壊を取り上げ、その原因と今後の対策について米国溶接学会の動きなどを含めて紹介した。我が国からの阪神・淡路大震災関連の報告としては、まず、高梨晃一(干葉大)が、震災における鉄骨造建築の被害の概況を各種のデータをもとに紹介するとともに、柱・梁接合部の破壊の特徴と原因分析、及び芦屋浜シーサイドタウン高層ビルに代表される柱接合部などにおける被害を紹介して、材料・加工の重要性につて指摘した。次いで、三木千壽(東工大)は、主に橋梁鋼構造物を取り上げ、主に橋脚の座屈や亀裂発生の特徴とまとめ、その原因について破面などの詳細な観察や再現実験などを紹介し、歪集中部の存在と塑性歪の繰り返しによる材質変化の重要性などについて指摘した。引き続いて、豊田政男(大阪大)が、阪神大震災における鉄骨溶接部の破壊をもたらした原因について分析し、設計、施工、材料の三つの面からの破壊原因を具体的に示すとともに、溶接施工の重要性について指摘した。
以上の基調講演について活発な質問・討論がなされ、最後にコーディネーターの一人の豊田(大阪大)が、ノースリッジと阪神両地震の被害の特徴を比較して、その類似性と相違についてまとめ、更に地震後の両国における動きを、設計基本概念、接合部詳細、溶接施工条件、材料の破壊靭性要求などの観点からまとめてしめし、溶接品質を高めるための普段の努力の必要性が指摘されセッションを閉じた。このような国際的に統合化した議論が今後も重要であることが述べられ、米国溶接学会と我が国の溶接学協会の共催で1997年秋に合同シンポジウムの開催が企画されていることなども紹介された。
セッション S−1
溶接構造の安全性評価
大阪大学工学部 豊田政男
本セッションは、溶接構造物の破壊を取り扱い、特に「地震と溶接」の特別セッションに引き続いて開催されたこともあって、全6件講演の内、建築鉄骨の耐震性に関するものが3件、地震時の破壊に関連する破壊基礎に関する講演が2件と、地震に関する破壊を取り扱ったものが多かった。破壊の基礎的な発表は、いずれもローカルアプローチを取り扱ったもので、実構造の破壊性能の評価において、従来の単一指標による破壊力学的アプローチの限界が指摘されており、一つはローカルアプローチに基づくワイブル応力を用いた評価によって、破壊靭性試験結果と地震などを含めたいろいろな負荷を受ける実構造溶接継手部の破壊性能が統合的に取り扱えることとその適用性を示したものであり、もう一つは、地震などの荷重履歴で見られる塑性子歪を受けた鋼材の破壊靭性を評価をローカルアプローチを適用して行える手法を提案するものである。建築鉄骨を対象とした3つの発表は、いずれも阪神大震災の破壊事例を示し、溶接接合部の設計のあり方の重要性を指摘し
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